オール・アバウト・テニス

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錦織、無念の棄権により、ジョコビッチが準決勝へ

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オーストラリア・メルボルンで行われているテニスの全豪オープン第10日。男子シングルス第8シードで世界ランキング9位の錦織圭が、第1シードで同1位のノバク・ジョコビッチと準々決勝で対戦した。錦織は、第1セットを1―6で落とし、迎えた第2セット途中で棄権した。

第2、第6ゲームと2度のブレークを許し、第1セットを1―6で落とした錦織。第1セット後、メディカル・タイムアウトを取って右足のケアを行った。だが、第2セットでも第3、第5ゲームにブレークを許し、1―4となったところで棄権した。

錦織は試合後「(第1セットの第4ゲームで)サーブを打っているときに右太ももに強い痛みを感じ、右足で蹴ることができなくなった。ほとんどの動きが痛みに変わってしまった。」と話した。

 

 テニスチャンネルのジョエル・ドラッカー氏はこの試合について次のように書いている。(以下、抄訳です。)

 この試合が、錦織にとって残念な結果に終わるのではないかというサインは、始めからたくさんあった。錦織はここまで、このトーナメントですでに14時間近くもプレーしている。それに対してジョコビッチは10時間だ。

加えて錦織にとってジョコビッチは対戦相手としては最悪の相手だ。それは、彼らのプレースタイルがとても似ているからだ。素晴らしいフットワーク、レーザーのように正確なバックハンド、もちろん、フォアハンドも悪くない。錦織とジョコビッチ、2人はラケットを巧みに操るハングマン(絞首刑執行人)。素晴らしい動きで対戦相手という犯罪者をつぎつぎと消し去っていく。

 試合前、ジョコビッチは錦織についてこう語った。

「錦織は、体が万全なときは、ハードに戦うとても手強い相手だ。」と。

 しかし、実際は、偉大なジャック・クレーマー氏がかつて言ったように、プレースタイルの似ている2人が対戦したときは、格上のプレーヤーが、圧倒的に優勢だ。彼(女)らが、自分に似たスタイルで、でも自分より少し劣る対戦相手に脅かされるものは何もない。何も怖くないのだ。だから、こんな場合は、彼(女)らが、55%程度勝つのではなくて、80%以上、勝利を独占する。もちろん、アンダードッグが何か新しいものを加えれば状況は変わってくるかもしれないが。そうでない限りは、アンダードッグが勝利を収めることはとても難しくなる。

 クレーマー氏の言葉通り、これまでの錦織とジョコビッチの二人の対戦成績は、ジョコビッチが16勝2敗と圧倒的に優勢だ。

 そして、昨日ジョコビッチは錦織相手に17勝目をあげた。右ももの怪我で1-6、1-4となっところで棄権した錦織。この試合も始めから、錦織にとって暗雲が立ち込めていた。最初のサービスゲームをブレークされるも、錦織はジョコビッチサービスゲームで、ブレークポイントさえも1度も握れない。第2セットの序盤までに、ジョコビッチの8に対して、錦織はすでに24のアンフォースド・エラーを犯していた。

 他の多くのトッププレーヤーと異なり、錦織は一回戦から、5セットマッチ(対戦相手は第5セット0-3のときに棄権)となった。その後もカロビッチとカレーニョ・ブスタ相手に5セットに及ぶ試合を2回もした。

「ここにくるまで本当に多く動かなければならなくて、体力を失ってしまった。今日怪我をしたのも、それが原因かもしれない。」と錦織は言った。

体調が万全であっても錦織にとっては、難しいマッチアップ。タイプの異なった3人の強敵を、5セットにもつれ込む接戦で、やっとのことで退けた錦織は、もう、心も、体も限界だったのかもしれない。

 以上がドラッカー氏の意見である。

 

" Anything you can do (I can do better)" という曲を思い出した。ジョコビッチと錦織の力関係は、こういう感じなんだろう。あなたができることは何でも、私のほうが少し上手くできる。

今回の錦織 VS ジョコビッチ戦は、多くの人が感じていたように、またもや残念な結果に終わってしまった。クレーマー氏が言ったように、錦織が「新しい何か」を自身のゲームに加えない限り、このマッチアップは、悲願のグランドスラム制覇を狙う錦織を今後もずっと苦しめることになりそうだ。