オール・アバウト・テニス

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全豪オープン 男子シングルス決勝 プレビュー

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ジョコビッチ VS ナダル

7年前、2012年の全豪オープンの決勝戦で2人が戦ったときは、5セット6時間にも及ぶ、テニス史上に残る死闘で、ジョコビッチが勝利した。

 

以下は、テニスマガジンのライター、スティーブ・ティグナー氏が書いた全豪オープン男子シングルスのプレビューの記事を翻訳したものです。

 

現在の男子プロテニスの現状をみていると、「世代交代」という言葉は死語に近い。10年以上もジョコビッチナダルフェデラーのビッグ3が支配し続けてるままだ。もちろん、彼らが引退する日がいつかはやって来るだろう。先週20歳のチチパスが37歳のフェデラーを破った試合は、ついに世代交代が始まったかと話題になるような、象徴的な試合だった。しかし、ワールドNo.1 で31歳のジョコビッチとNo.2 で32歳のナダルに対しては、だれも何もできなかった。この2人は、他のプレーヤーより、明らかにレベルが上のように見えた。そして、この2人が日曜日に、全豪オープンの決勝戦で再び対決する。これが彼らの53回目の対決だ。

この二人がグランドスラムの決勝で対決するのは、2014年の全仏オープン以来である。これまでの対戦成績はジョコビッチが27勝25敗でリードしている。しかし、最近のグランドスラムの決勝(2013年の全米オープン、2014年の全仏オープン)では、ナダルが勝利している。2人が最後に全豪オープンで対決したのは、2012年の決勝戦で、6時間に及ぶ大バトルは、ジョコビッチが勝利を収めた。

彼らの13年間に及ぶ、長いライバルの歴史のなかで、モメンタム(力の優劣)は激しく変化してきた。現在、優勢であるのは誰なのか。

ここ9ヶ月間をみてみると、ジョコビッチであると言える。現在、グランドスラムで2連勝中で、ランキングも1位である。そのうえ、2018年のシーズンで最高の試合と言われた昨年のウィンブルドンの準決勝戦でも、ナダルに5セット目、10-8のスコアで競り勝った。今回の全豪オープン準決勝でも、プイユに完勝していて、調子はいい。これまで6回優勝している彼の得意なサーフェスで、今大会、好調である彼を破るのは、誰にとっても至難の業だ。

しかし、この大会期間中の2週間だけをみてみると、ナダルのほうが優勢だと考えることもできる。サーブの調子がすごく良く、アグレッシブなプレーで、今のナダルは自信に満ちあふれている。準決勝でナダルに完敗したチチパスは、「ナダルのテニスのレベルは、僕とは全く異なった領域だった。」と舌を巻いた。また、去年のウィンブルドンの準決勝でも、あと数ポイントというところまで、ジョコビッチを追い詰めた。ナダルが勝ってもおかしくない試合だった。

こう考えると、この試合は、大接戦の素晴らしい試合になると思われる。ジョコビッチはこれまでの全豪オープンのなかで、今回が最も調子が良いようにみえるし、ナダルに限っては、史上最高に調子が良いのではないかと思うようなプレーをしている。ただ、そんなナダルのレベルでさえ、ジョコビッチを倒すのに十分なレベルなのかは疑問である。クレー以外の他のサーフェスでは、ジョコビッチのほうが優勢だ。去年のウィンブルドンの準決勝では、ジョコビッチに対して、ナダルはすばらしい、攻撃的なプレーをしたが(今年の全豪オープンでのプレーに似ている)、それでも、結局、最後に勝ったのは、ジョコビッチだった。その理由は 1)ジョコビッチのプレースタイルのほうが、球足の速いコートでは有利であるということ、2)そして、ナダルジョコビッチもそのことをよくわかっていること。だからであろう。

今回も、これまでと同じような結果になるだろうか。勝敗を左右する、重要な要素の一つは、ナダルの改善されたサーブと、最高のリターナーであるジョコビッチのリターンの対決の行方だ。

この試合の結果は今後、多くのことに影響を与える。ナダルが勝てば、フェデラーの持つ、グランドスラムタイトル獲得数の最多記録(20)にあと2つと迫る。また、ナダルが、2つ目の全豪オープンのタイトルを取ることは、彼が、4つの異なったグランドスラムで、少なくとも2つずつ優勝したことになり、それはロッド・レ―バー以来の快挙となる。もしジョコビッチが勝てば、ナダル持つ、歴代2位のグランドスラムタイトル獲得数(17)まで、あと2つに近づく。また、全豪オープンの優勝者には、年間グランドスラムの可能性も残される。

よりプレッシャーを感じるのはどちらだろうか。過去に2度、ナダル全豪オープンの決勝戦で、5セット目に先にブレークをした後に、勝利を逃した経験がある(それも、1度はジョコビッチに対して)。もし、ナダルが、再び同じような状況になったとき、彼はどのように反応するだろうか。

7年前、彼らは、本当に素晴らしい試合をした。今大会での彼らの様子をみていると、前回ほど、長い試合になるとは思わないが、内容はあの時と同様に、素晴らしいものになると感じている。過去の彼らの試合には、テニス史上に残るようなものが多くあり、今回の試合がまた、そうであっても、もう驚きもしない。

 一つ言えることは、男子プロテニス界では、世代交代はまだまだ先だ、ということだ。

 

筆者の予想する優勝者:ジョコビッチ