オール・アバウト・テニス

主に海外(特にアメリカ)で取り上げられているテニスに関する興味深いニュースをピックアップしてお届けします。

アメリカでの男子人気スポーツとテニスの立ち位置

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www.cbsnews.com

アメリカでは、男のスポーツとして、テニスはジュニアでもプロレベルでもマイナースポーツ。では、アメリカで人気のスポーツとは? 今回は、アメリカにおいての人気スポーツとテニスの人気度を個人的な見解から見ていきたいと思います。

 

アメリカで人気のプロスポーツ

プロで人気のあるスポーツと言えば、もちろん、アメリカンフットボール(NFL)、バスケットボール(NBA)。これらが、不動のツートップで、そのあとに、野球(MLB)、アイスホッケー(NHL)が続くといった感じです。(視聴者の多さという点から見ると、1位 NFL、2位 NBA、3位MBL、4位NHLという順位です。)  

スーパーボウルNBAファイナルのあの盛り上がりを見れば、これらが、アメリカの国民的スポーツとして社会に深く根付いていることがよくわかると思います。

そして、これら人気プロスポーツに共通しているのは、観戦する側としてはもちろんですが、プレーする側としても魅力的なスポーツであるということです。

アメリカでは、プロスポーツリーグのシステムが非常によく整備されていて、給料も良く、福利厚生もきちんとしていて、一部のトッププロだけでなく、より多くの人がプロとして一定の生活できるような構造になっています。アメリカの人気スポーツのプロリーグを会社に例えるなら、きちんとした大企業の優良会社。もちろん勝負の世界なので、その内部で生き残るための競争は厳しく、いつクビになるかわからないという怖さはあるものの、雇われている限りは、それなりのケアが期待でき、プロとして生活していくことが十分可能です。(ちなみに基準を満たしたプレーヤーには、年金制度も充実しています。)

ちなみに、毎年6月に発表されるフォーブスの「世界で最も稼ぐスポーツ選手」のリスト。2018年版のランキングのトップ100にランクインしたアスリートの中では、アメリプロバスケットボールリーグ(NBA)の選手が最も多くを40人。2番目に多かったのは、ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の18人ということで、この2つのプロリーグの選手達で過半数をゆうに超えています。

(他のスポーツと比べて)比較的多くの人が、高給を取るチャンスがあることが、アメリカの人気プロスポーツリーグの特徴です。

 

ジュニアで人気のスポーツ

男の子にとっての人気のスポーツはプロの人気度をそのまま反映しているといってよいでしょう。やはり、花形である、アメフト、バスケは男の子に大人気。どこの町にでも必ず子供のリーグがあるので、気楽に始められて、継続することができます。そして、才能があれば、プロへの道がしっかり整備されて、開けていているので、なんといっても夢があります。やる本人もモチベーションがでますよね。あとは、サッカーも子供時代(特に小さいとき)に限っては男の子にとってもわりと人気のスポーツです。

 

テニスの立ち位置

アメリカでは、男の子のスポーツの選択肢としては、テニスはかなり下位のマイナースポーツ。男の子はスポーツのオプションが多くあるので、その中でわざわざ、いろんな意味で条件の厳しいテニスを自ら選択することは、なにか特別な理由がない限りはあまりありえません。

まず、テニスは アメリカで普通を生活している分には、やるキッカケがあまりありません。そして、たとえ、始めたとしても、ジュニア育成に異常に長い時間がかかりますし、その間ものすごい経済的・時間的負担を強いられるので、なかなか、継続することが容易ではありません。そして、もちろん、プロへの道は相当才能があっても難しく、中・下位レベルのプロは、生活していけないのが状況です。

逆に、例えばNFLのプレーヤーなどでは、ポジションによっては、高校生から始めてプロになった人もいます。特にキッカーやディフェンシブラインの選手などは、それに見合った才能やフィジカルがあれば、テニスほど、スキル習得のために時間を費やす必要はありません。素晴らしい運動能力と身体能力があれば、思春期から始めて、何億も稼ぐプロになることも夢ではないのです。

子供のスポーツの選択には、親の意向が大きく関わってきます。もちろん、どんなスポーツをしても100%サポートできる環境ならば良いのですが、通常考えて、大人なら(=親なら)正直、こんな、負担は大きく、リターンの期待できないテニスというスポーツに魅力を感じることはできないのではないでしょうか。そのため、アメリカで子供にテニスをさせている”典型的”な親と言えば、自身がテニスコーチなどのテニス関係者であったり、または、もともとテニスが人気だった国から(東ヨーロッパなど)移住してきた人達だったり、または、体格的にアメフトやバスケは厳しく、怪我などが心配なためコンタクト(体が接触する)スポーツをやらせたくないアジア系(とは限りませんが)の親だったり、というのがよくあるパターンです。そのため、テニスは、いわゆる特定のグループ人たちのスポーツという感が否めません。アメリカに何世代にもわたり住んでいる、メインストリームの「一般的なアメリカ人」の親や子供が、”なんとなく”選択してプレーする(させる)スポーツではないのです。

実は、アメリカでは、サッカーは子供時代には男女ともに人気のスポーツですが、その後、男子では、大学、プロレベルになるとめっきりマイナースポーツになります。アメリカでもプロリーグはあるものの、プロへの道がアメフトやバスケのように整っていないので、才能ある子供達が途中で、アメフトやバスケなどのより好条件で人気のあるスポーツを選択をするというケースが多いのではないかと思います。

テニスも同じような部分があり、アメリカのメジャースポーツのプロが、子供のころはテニスをしていたという話もちらほら聞くことがあります。(テニスはもともと子供の頃にプレーしている人が少ないと思うのですが。)

人気のスポーツが人気なのは、やはり、それなりの理由がある訳で、その魅力に魅かれて、多くの人がそこに集うのも仕方ない気がします。やっぱり人は条件の良いところに集まるものです。その点でテニスは、条件が悪いことこの上なし。負担が大きすぎて、やはり、個人スポーツとしての限界を感じてしまいます。そんなわけで、今後もアメリカ社会の中で、この立ち位置が変わることもおそらくなく、今後もマイナースポーツとして、アメリカでテニスを頑張っている男の子達は、学校で友達に多少からかわれながらも、これからも細々と頑張っていくことでしょう。

 

さて今回は、アメリカに長年住でいる経験から感じた「一般的なアメリカ」についての個人的な感想を記事にしました。ただ、アメリカは広大で、多くの異なったバックグラウンドの人々が住んでいます。一般的というような言葉を使っていいのかと戸惑うくらい、地域差、人種、民族間での差、社会経済的(socioeconomic status)な差があります。そして、人気のスポーツもそれぞれのグループによって異なってくることをどうか憶えておいてください。