オール・アバウト・テニス

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今シーズンのここまでを振り返って

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tennis.com

1月に始まった今年のテニスシーズン。早いもので3か月が経過しました。現在は、春のアメリカでのハードコートシーズンが終わり、本格的なクレーコートシーズンが始まるまで、ちょっと一息ついているファンも多いのではないでしょうか。

さて、今日はすでに4分の1が終わった今季のここまでを振り返るために、Tennis.com の Steve Tingor氏の記事を紹介します。

 

「34イベントで33人の異なったチャンピオンを生み出した今年のここまでのテニスシーズンは、最も印象的なテニスシーズンとなってきている」

(意訳)

会計年度(企業の資金計画に用いる12ヵ月の期間のこと)に例えると、2019年のテニスシーズンは、ファーストクオーター(1年の最初の4分の1の期間)が終了しました。シーズンが始まってから3か月、アメリカでの春のハードコートイベントが終わり、これから6月半ばまで続くクレーコートスウィングが、すでに一部では始まっています。

それでは、このファーストクオーターでの最大の話題は、何であるでしょうか。ノバク・ジョコビッチの3度連続のグランドスラムタイトルか、それとも、大坂なおみの2度連続のグランドスラムタイトルか。ロジャー・フェデラーの復活か、セリーナ・ウィリアムズの不運か。それとも、若いギリシャのプレーヤー、ステファノス・チチパスの台頭か、または、彼よりもっと若い2人のカナダ人、ビアンカアンドレスクとフェリックス・オジェ アリアシムの急伸か。

これらすべてのことは、それぞれに、とても興味深く、ある意味、少し驚くこともあったといえるでしょう。ただ、これらの出来事を全部ひっくるめて考えると、ある重要で、今までに例を見ないような事実が浮かび上がってきます。それは、驚くほど、男女両方で、トッププレーヤーの間での力の差が無くなっているということです。今季これまでの34のトーナメント(男子は20、女子は14)で、33人の異なったチャンピオンが誕生しました。この中で2つのイベントで優勝しているのは、最高齢のロジャー・フェデラーだけです。

果たして、我々にとって、これは良いことなのか、悪いことなのか。

このような選手間の力量が接近しているこという状況に魅力的を感じるかどうかは、それぞれの個人によって異なるでしょう。あなたが、同じチャンピオンが勝利を独占することで満足を得るか、それとも、アンダードックが勝利する番狂わせを見て興奮するのか。今回、2019年のテニスシーズンの場合、どちらを好むかは、あなたが、テニスというスポーツにどれだけ深く興味があるかということに大きく影響されると私は思ってます。

テニスのセリーナであろうと、アメフトのトム・ブレイディであろうと、勝利を独占している偉大なチャンピオン達に、多くのにわかファンは魅了されます。

彼らのセレブリティとしての存在感、興味深いパーソナリティ、名声や不名誉までもが、多くの人にインパクトを与えて、スタジアムを満席にして、人々をTVの前に集めるのです。美しいドロップショットを見れば、だれもが素晴らしいと思いますが、それが、ロジャー・フェデラーラファエル・ナダルが打ったのであれば、余計に素晴らしいと感じるでしょう。また、にわかファンに加えて、彼らのようなトッププレーヤーたちは、すでに世界中にファンが多く存在しています。

しかし、あなたが、毎週のようにテニスの試合を見ているようなテニスファンなら、今季のたとえ誰がプレーしていてもチャンスがあるような、無限の可能性を秘めた状況は、好みに合うのではないでしょうか。あなたは、アシュリー・バーティ、ドミニク・ティエム、エリーズ・メルテンス、ライリー・オペルカ、ニック・キリオスなどの才能ある若手が、その能力を発揮してタイトルを取ることを待っていたのではないですか。または、アンドレスク、チチパス、アレックス・デミノー、ダヤナ・ ヤストレムスなどの新しい才能が番狂わせを起こすのを見て、エキサイトしませんでしたか。同時に、昔馴染みのガエル・モンフィスやベリンダ・ベンチッチの復活劇を見て、うれしく思ったりもしたのではないでしょうか。

私自身は2番目のグループの属する、より少数派のテニスファンだと思っています。そのため、私は、可能性を感じる状況が好きなのです。もちろん、力の均等が、(独占状態でもありうるのですが)、度を超すこともあります。そうなると、いつもランダムな結果となり、たまたまその日調子が悪かったプレーヤーが負けるというような、全く予想のつかないツアーになってしまいます。

このように行き過ぎた時期は歴史を振り返ってみると過去にもありました。しかし、今シーズンは、これまでの様子をみていると、そのような時期とは違っている気がします。そして、私がそう感じるのには2つの理由があります。

一つ目の理由は、確かに多くの異なった優勝者が出ているにもかかわらず、大きなイベントでの、秩序は守られているからです。今年ここまでの唯一のグランドスラムである全豪オープンで優勝したのは、グランドスラムタイトルを3度連続で取ったジョコビッチと、2度連続で取った大坂で、2人とも現在の世界ランキングはNO.1 です。そして、準優勝者は、過去に何度もグランドスラムで優勝を経験しているナダルとコビトバでした。フェデラーはマスターズで優勝と準優勝をしました。毎週のようにサプライズの結果があるものの、その中でも従来のエリートプレーヤー達は、最も重要な大会でレベルを上げ、いつものような結果を残します。

二つ目の理由は、今シーズンは、昨シーズンと同様に、ただのランダムな結果というよりも、長く記憶に残るような印象深い場面が多くありました。新たな世代は、地位を確立するために競い合い、ベテラン達は、これまでの状況を必死に守ろうと戦っています。そのため、ここまでの結果は、これまでの親しみ深い馴染みのあるものと、新しい驚きのあるものが丁度良くミックスされています。ラスロ・ジェレのリオデジャネイロで勝利した後の感動的なスピーチ、ベンチッチのドバイでの奇跡のカンバック、キリオスのアカプルコでの驚くべき一週間、マイアミでのバーティの素晴らしいオールコートプレー。

33人の異なった優勝者たちは、33つの異なった勝ち方をファンにみせてくれました。今季ここまでの一人一人異なった勝ち方を見るたびに、私は、とてもいい気分になるのです。

 

私は、第2グループに属しているテニスファンだと思いますが、確かに若手がどんどん出てくることにはワクワクしています。なんというか、彼らの若い伸び盛りのテニスを見ると希望がもらえるというか、パワーが出るというか、とにかく、そんな感じがするのです。それと同時にベテランの高齢化に伴って、若手とベテランの力の差がどんどん狭まり、テニス界の構図が少しずつ変わってきていることに対してさびしさも感じます。栄枯盛衰は世の習いなので、仕方ないのですが、まだ過去に未練たっぷりで、まだまだ、ベテラン達に頑張ってほしいと思っています。できるだけ長く、このベテランも若手もごっちゃまぜになって競い合っている時が続けばいいなと思っているのです。

さて、本格的なクレーコートシーズンももうすぐです。女子は、相変わらず混戦の模様ですが、男子はナダルの独占なるか。。。それにしても、ナダルがいよいよクレーで負けだしたらと考えると、ちょっとショックだなあと思う今日この頃でした。