オール・アバウト・テニス

主に海外(特にアメリカ)で取り上げられているテニスに関する興味深いニュースをピックアップしてお届けします。

テニスがくれたチャンス

f:id:sakuragasaitane:20190409044428j:plain

ジョージア工科大学


ジュニアテニスとお金の問題。多くのテニスプレーヤーとその家族にとっての永遠のテーマです。

個人によって大きな違いはあるものの、ジュニアをカレッジレベルに育成するために、7~8歳でテニスを始めて 18歳までの10年間にかかる育成費は平均で、$100.000~$150.000という記事を目にしたことがあります。しかし、これはおそらく最低ラインに近い見積もりで、例えば、テニスアカデミーにフルタイムで通えば、年間$60,000~$80,000ほどかかり、その額を数年で超えてしまうことになります。

とにかく、ジュニア育成にはお金がかかります。

そんななか、あるテニスプレーヤーが今秋からジョージア工科大学に進学します。(ジョージア工科大学はアトランタにある工科系大学の名門校で、US news & world report の2019年のカレッジランキングでは35位にランクしています。スポーツでも名門校で、NCAA D1の強豪がひしめくACCカンファレンスに属し、現在男子テニスチームはITAの最新ランキングで、49位につけているという文武両道の大学です。)

そのプレーヤーの名前は、アンドレ・マーティン。彼は、アトランタから一時間弱離れたジョージア州フラワリー ブランチに住んでいる、高校シニア(最上級生)のブルーチップ(最高レーティング)プレーヤーです。

今回は、tennis recurting network に掲載された彼についての記事を紹介したいと思います。

 

近所の人の助けでジョージア工科大学へ

アンドレ・マーティンは、昨年の夏、彼の住むジョージア州フラワリー ブランチの自宅の近所の家を一軒一軒回って歩いた。

マーティンは、トーナメントのエントリー料を稼ぐために仕事を探していたのだ。そのために、彼は芝生刈りでも、窓を綺麗に洗うことでも、何でもするつもりだった。

「家は、あまり余裕がある家庭ではないので、テニスみたいなスポーツをすることは本当に大変なんです。」マーティンは言った。「だから、何とかプレーできるように、何でも、どんな仕事でもするつもりでした。近所の人は、みんな、とても気前よく仕事をくれて助けてくれました。そのおかげでお金を少し稼ぐことが出来たんです。」

マーティンの近所の人は、彼のここまでの成長の過程と、彼の未来の更なる飛躍のチャンスに少しでも貢献できたことをとても誇りに思っていた。ブルーチップの高校シニアのマーティンは奨学金を得て、ジョージア工科大学への進学が決まったのだ。昨年の11月、彼はイエロージャケッツ(ジョージア工科大学のチーム名)と正式にサインした。

ジョージア工科大学は、僕にとって、素晴らしい選択でした。家から近いし、そのすごく優秀なプログラムで、エンジニアリングを勉強できるから。」

「テニスチームもこれからどんどん強くっていくと思います。今年、入学するプレーヤーはみんないいやつで、テニスもすごく上手いんです。彼らと一緒にプレーできるのを楽しみにしてるんですよ。」

マーティンはアトランタ生まれで、2歳のときに近くのフラワリー ブランチに引っ越した。彼の母親は、アトランタのテニスリーグでプレーしていて、それがきっかけでマーティンもテニスを始めた。

マーティンが、彼のコーチである、 Murry Lokasundaramと出会ったのは、彼が、8歳の時だった。それ以来、ここまでずっと彼はマーティンをコーチしてきた。

「彼はすごくいい子です。本当にね。一生懸命努力するし、ナチュラルな才能にも恵まれている。」Lokasundaramは言った。「彼のコーチになれたこと、そして、ここまで、彼と多くの時間を過ごすことができたことは、私にとって、すごく幸運なことでした。ある意味、私たちは一緒に学んで、一緒に成長してきたんですよ。」

マーティンと Lokasundaramは、パブリック(公営)のテニスコートでトレーニングしながら、これまで、マーティンのテニスの費用の助けになるように、助成金奨学金に多く申し込んできた。

「彼は、カントリークラブ育ちじゃないですからね。そして、それは、とても素晴らしいことだと思います。本当に少ない資金で、本当にたくさんのことを成し遂げたんですよ。」Lokasundaramは言った。「こんな子供は彼だけじゃない。素晴らしい才能があるのに、金銭的な理由であまりたくさんプレー出来ない子供は、テニスではどちらかと言えば少数派でしょうけど。でも、そうゆう子供達が、もっと頼れるところがあったらいいと思うんです。」

マーティンは過去に数年ほどサッカーもしていた時期があったが、高校入学時にテニスに専念することを決めた。そして、ホームスクールを始めて、テニスをする時間を増やした。

また、ここ3年は、マーティンはサウスキャロライナ州にある Smith Stearns Tennis Academyからの奨学金を得て、そこでトレーニングをすることができた。

「やっと最近、テニスでベストになりたいと思うようになったんです。」と、マーティンは言った。「正直、過去には、もうやりたくないと思ったこともあったけど、両親から続けるように背中を押されて、そうして、毎日トレーニングする中、自分の目標を見つけたんです。それで、テニスが楽しくなり、そして、もっと上達したいと思うようになりました。」

マーティンは高校時代、多くのトーナメントに一人で参加しなくてはならなかった。それが、彼が、彼自身のキャリアについてもっと責任を感じるようになった理由でもあった。「自分一人で全てをしなければいけない状況が、彼に自立を促したし、その中で自制心も学ぶことが出来たんだと思います。」Lokasundaramは言った。「もし、なにか問題があったとき、彼は、自分の力でその問題を克服しなければならなかった。それが、彼の成長を本当に助けたんだと思います。」

マーティンが初めてLokasundaramからレッスンを受けたその日から、彼は、マーティンに大学でプレーすることの大切さを説いてきた。

「彼は、教育をとても重視してるんです。いつも教育第一だって言われてきました。」マーティンは言った。「小さい頃、プロになりたいと言ったら、まず、大学でプレーしてからって言われました。」

Lokasundaramは、マーティンにプロテニスプレーヤーになる夢を思いとどまらせようとしたわけではないが、彼は、マーティンが怪我したり、プロとして成功しなかった場合に備えてセーフティネットを用意してほしかった。

「私にとっては、教育が最優先事項。多くの子供や親が、子供がプロになることだけに固執しすぎていると思っています。」Lokasundaramは言った。「アンドレは、アメリカで最も優秀な学校の一つに奨学金を得て行くんです。テニスで成功しても、しなくても、彼には素晴らしい未来が待っている。それが、とても重要なんです。」

育った街の近くにある大学に行くので、子供の時からアトランタ地区で一緒にトレーニングしてきた多くの仲間たちとチームメートになることができる。

ジョージア工科大学でのチームメートの多くを、僕は子供のころから知っているんです。彼らと大学で一緒にプレーできるなんて、とても楽しいだろうなと思ってます。」マーティンは言った。「カレッジアスリートは、テニスと勉強ですごく忙しく、時間の使い方がカギになるでしょう。すごく大変だろうと思うけど、今からとても楽しみにしています。」

                アンドレ・マーティン

f:id:sakuragasaitane:20190409093616j:plain

tennisrecruiting.net

 

 

マーティンは、近所の人たちが彼のことをこの先もずっと応援してくれることを知っている。夏に、芝生を刈ったり、窓を洗浄した経験は、試合の時により大きなモチベーションを彼に与えてくれた。トーナメントに参加できるように、人一倍、頑張ってきたのだ。この機会を無駄にしてはいけないと。

「将来の最終的な目標は、いつか、自分と似たような状況の人に恩返することができたらいいなと思っています。」とマーティンは言った。「歳をとって、そんなチャンスがあれば、今度は、自分が誰かを助けられればいいなって。」

 

ジュニアテニスとお金の問題は、本当に深刻です。トレーニングは高額で、遠征するのもお金がかかります。トーナメントのエントリー料だけでも結構します。一般的な家庭からそんな高額な費用を捻出するのは一苦労です。そのため、このスポーツを辞めて行ったり、ポテンシャルに届くことが出来なかったプレーヤーも多くいるでしょう。

そんな中、彼はよく頑張ってきたと思います。おそらく周りはお金持ちばっかりの、そんな中で、マーティンは、周りの人に助けれらながらも、甘えることなく、自分でも頑張ってチャンスを手に入れました。彼なら、この先どんな状況になっても、人生を切り開いていけるでしょう。その姿勢をテニスを通して、学んできたのだと思います。

Where there's a will, there's a way. ~意志あるところに道はある

同じような状況の中いる皆さんも、もうちょっと頑張ってみませんか。