オール・アバウト・テニス

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テニス愛を育むために:ジュディ・マレーからジュニアの親へ

 

 

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フロリダの有名なテニスコーチで、ビーナス・ウィリアムズとセリーナ・ウィリアムズの子供の頃のコーチでもあったリック・マーシーは、ビーナスとセリーナの父親のリチャードについて、かつてこう言ったことがあります。

「彼は奇跡だよ。娘2人をチャンピオンにしたのに、その娘達が、いまだに彼と口をきいてくれているんだから。」

この言葉、テニスをする子供と親にありがちな微妙で繊細な関係をよく表していると思いませんか?

ジュニアテニスでは、親の関わる割合がとても大きく、親の行動が行き過ぎると、それが、子供の健全な成長を妨げてしまうこともあります。どのようなスタンスで子供のテニスに関わればいいのか。そのバランスを見極めるのは容易ではないでしょう。

今回は、テニスコーチで、ジェイミー・マレー、アンディ・マレーの母親でもある、ジュディ・マレーのコラムを紹介します。ダブルスチャンピオンとシングルスチャンピオンの2人のプロテニスプレーヤーを育てた彼女から、今頑張っているジュニアの親に向けてのメッセージです。

 

テニスへの愛を育むために

もし、あなたが、テニスが盛んではなく、その上、天候も最悪なのにインドアコートもほとんどないスコットランドに住んでいる女性が、どうやって2人の息子をプロテニスプレーヤーに育てたのかと、不思議に思っているならば、私は、あなたに本当のことを教えてあげましょう。私はそんなつもりは毛頭になかったのです。

私は、80年代にプロテニスで少しだけプレーしました。そして、そのテニスというスポーツは大好きでしたが、私の2人の息子たち、ジェイミーとアンディをプロテニスプレーヤーにしたいなどと考えた事はありませんでした。2人がまだ幼かった頃、私は、営業の仕事をしていました。そして、アクティブなライフスタイルを維持したいという単純な理由から、近所のテニスクラブでボランティア活動を始めたのも丁度この頃でした。その数年後、私はコーチングについて学び始めて、現在ではコーチ歴も20年になりました。

私はスポーツ一家の出身で、私の息子たちへの方針もシンプルでした。彼らになるべく多くスポーツをする機会を与えること。彼らには、ここでできる限りの全てのスポーツをさせました。体操競技、スカッシュ、バトミントン、テニス、フットボールアメリカでいうところのサッカー)、アイススケート、ミニラグビー、スイミング。。。

私は、子供は小さなころに様々なスポーツを経験するべきだと思っています。個人スポーツ、団体スポーツ、異なった種類のスポーツを小さい頃に経験することは、「視覚と手の協調」の発達に役立ちます。子供の時がこれらの発達にとても重要な時期であるのは周知の事実です。また、それぞれに特徴の異なったスポーツで勝つには、どうすれば良いかということを考えなければならず、その結果、様々な戦術を学ぶことができます。もちろん、友達も多くできます。子供が初めてのスポーツのクラスに参加する時に、スポーツを選ぶのは親かもしれませんが、子供が8歳頃になると、彼(女)自身がどのスポーツに興味がり、何を本格的にやりたいか自分で分かってくるはずです。ちなみに、アンディは、14歳まで、テニスと同じくらいフットボールをしていました。ジェイミーは、15歳の時はゴルフでハンディ「3」 でした。テニスが上手くなるには幼いころから始めないといけないというのは、その通りなのですが、子供の時に、プロのようにトレーニングする必要はありません。

現在、ジュニアテニス育成の過程は、システム化されています。そうしたテニスのプログラムでは、ボールを正しく打つことは学びますが、もっと深い意味で、テニスというゲームを学ぶことは難しいのではないかと思います。小さいときに、素晴らしいポテンシャルがあると期待されている子供とその親が、まだ早すぎる時期に、そういったプログラムに入り、長時間コートの上でテニスのトレーニングばかりしているということを、見たり聞いたりすることがよくあります。私の息子たちが小さかったときは、私がコーチをしていたスポーツクラブで、テニスだけでなくいろいろなスポーツをしていましたし、テニスをするときでも、彼らの年代の子供達だけと打っているわけではなく、年上、年下、大人など様々な人とプレーしていました。このようにして、彼らは、いろいろなプレーヤ-のゲームに触れて、それを理解することで多くのことを学びましたし、異なった 体のサイズ、年齢、ゲームスタイルの相手をどのように対処すべきかということも学びました。テニスの試合では、常に問題が起こり、その問題をその都度、解いていかなければいけません。テニスで強くなるには問題を解決するスキルがとても大切になるのです。それは、多くの異なったタイプのプレーヤ-と対戦することで学ぶことができると私は思っています。いつも自分と同じような年齢の子供とばかり打っているだけでは、なかなか学べるものではないと。

子供が小さいときは、彼(女)らが楽しいと感じることがなにより大切です。彼(女)らが、テニスを将来のキャリアとして、または、やらなければいけない仕事として見てしまうのではなくて、テニスを大好きになることが、とても重要なのです。そうなれば、将来、もしプロになるような厳しいトレーニングをすることになっても、それも、そんなに悪くないと思えるでしょう。一方で、幼いときに、競争ばかり意識して、勝敗ばかりにこだわり、結果のみを重視するようなことをすると、ストレスや不安を感じて、テニスが負担になったり、つまらなくなったりして、そのせいで、辞めてしまうということもあるでしょう。特に、親が子供のテニスの結果やパフォーマンスに熱心になりすぎて、テニスに関して過干渉してしまい、子供がうんざりしてしまうというケースがとても多いように思います。

子供時代だけでなく、楽しむことは、プロレベルでも大切です。私は、現在イギリスのフェデレーションカップの監督を務めていますが、私は、プレーヤ-達にコートでできる、楽しいゲームをよくさせます。テニスをエンジョイするのに年齢は関係ありません。いくつになってもコートの上で楽しいと感じる気持ちがある限り、あなたはコートの上に立ち続けるでしょう。

 

長くなったので、その2に続きます。