オール・アバウト・テニス

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ジュニアの親たちへ:リンゼイ・ダベンポートからのメッセージ

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南カリフォルニア出身の元女子プロテニスプレーヤーであるリンゼイ・ダベンポートさん。現役時代は、グランドスラムタイトルをシングルスで3つ、ダブルスでも3つほど獲得して、2014年には国際テニス殿堂入りを果たしました。長身から繰り出されるパワフルなサーブとグランドストロークを武器にした彼女の攻撃的なプレーを、憶えている人も多いのではないでしょうか。そんな彼女は、現在、テニスチャンネルのコメンテーターとして活躍中。私生活では、元カレッジテニスプレーヤーで現在は投資銀行に勤務されている旦那様との間に4人のお子さんがいらっしゃいます。

今回はそんな彼女が、ジュニアテニスプレーヤーの親御さんへ向けて書いたブログを紹介します。以前に紹介したジュディ・マレーさんのブログが親の目線で書かれているのとは異なり、リンゼイ・ダベンポートさんのブログは、子供(ジュニアプレーヤー)の目線で書かれています。

 
正しい選択をするために

多くの親は、子供がテニスで成功を収めるために、いったい何をすればいいのか知ろうとします。それに対しての私の答えはとてもシンプルです。テニスで成功するためには「全て」が必要です。エネルギー、体力、時間、持っている全てのものをテニスに捧げるのです。そのためには、学校でのダンスパーティー、友達とのパジャマパーティーなど、他の楽しいことの多くを犠牲にしなければなりません。しかし、たとえそうしたとしても、テニスで成功する可能性は、本当に小さいものです。テニスプレーヤーを職業として生きていける人は、運よく「全てのこと」が上手くいった、ほんの一部の人だけ。そして、その「全てのこと」のほとんどは、親であるあなたが、コントロールできることではありません。

そんな中、一つだけ、親がコントロールできることがあります。それは、あなたと子供との人間関係です。私自身の経験から言うことができますが、子供を素晴らしいテニスプレーヤーに育てるために、親と子供の関係を壊してしまう必要はないのです。

私の子供時代は、テニス中心に全てのことが回っていました。毎日練習して、毎週末トーナメントに出場して、それが、私の人生でした。宿題とボールを打っていること以外、あまり思い出はありません。プロムもパーティーも学校のイベントも全く参加できずに、友達と遊ぶ暇もほとんどありませんでした。そんな私の存在は、少し奇妙なものであり、孤独に強くなければいけません。そんなテニスばかりの状況がつらいと感じることも正直ありました。特に、テニスは精神的にとても大きな負担がかかるスポーツです。テニスで負けると、全て自分のせい。その事実には、とても心が痛みました。

しかし、小さい時からのこのような生活を望んだのは、親ではなく、私でした。テニスをすることが大好きで、いつもテニスをしていたかった。私の両親は、テニスよりも学校のことを気にかけていました。私は、学校で良い成績を維持している限り、テニスを好きなだけやって良かったのです。

両親は、私がテニスで良い成績を残していることを、大したこととして扱いませんでした。私には2人の姉がいて、下の姉は、素晴らしいバレーボールプレーヤーでしたが、私のテニスでの成功に焼きもちを焼くので、家では、テニスの話をすることは決してありませんでした。そのせいで、私はテニスで良い成績を収めても、すごいことなんだと思うことはありませんでした。

もちろん、私がここまでこれたのは、私一人の努力ではなく、両親のおかげでもあります。親にとってはバランスが難しいところでしょうが、あなたの子供がどんなに才能があっても、どんなにやる気があっても、やっぱり彼(女)は子供です。彼(女)らには、きちんと躾をしてくれて、正しい方向に導いてくれる人が必要です。テニスが大好きであった私でも、練習をサボりたいと思ったことは何度もありました。私の母はそんな時、甘くありませんでした。彼女にとっては大切だったことは、私をプロしたいということではなく、私が一度決めたことを遂行するという姿勢であり、「義務と責任」が大切だったのです。私が練習に行きたくないというと、彼女はいつもこう言いました。「もうお金を払ったんだから、行きなさい。」私がやると約束したのだから、やり遂げなさいと。

 

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ジュニアでプレーしている過程で、多くの友達がテニスを「もう嫌だ」といって辞めてしまうのを見てきました。テニスプレーヤーとして生き残るには、それに合った性格が必要です。辞めていった多くの友達の中には、彼(女)自身より親が子供のテニスに熱中してしまったというケースがよくみられました。

私は、テニスをいつでも辞めることができる状態でした。私が辞めたいと言えば両親は、反対することはなかったでしょう。ただ、健康的でいるために、なにか他のスポーツでもしたらといったはずです。他のジュニアプレーヤー達は、そんなにラッキーではありませんでした。なかには、親から虐待のようなことを受けてるプレーヤーもいました。

私が、ジュニアプレーヤーの親に言いたいことは、どんなに、あなたが子供をことをよく見て理解していると思っても、たとえ、子供のテニスの試合を全て見ていても、それでも、ジュニアテニスの本当の厳しさは分からないだろうということです。私自身、子供のころ、他の子供の親に怒鳴られたこともありました。少しシャイで、自信がなかった私は、試合で戦うことはあまり好きではありませんでした。たとえプロになった後でもそれは変わりませんでした。「試合で戦うこと」は本当に厳しいことです。本当に心が乱されます。私が好きなのは、単純にボールを打つことだったのです。

両親のサポートなしでは、私がテニスプレーヤーとして成功を収めることはできませんでした。私が両親に最も感謝することは、彼らは、テニスに関して、私をそっとしておいてくれて、全て私に自分の意志で決めさせてくれたことです。「私のしたいこと」として始まったテニスが、「彼らのしたいこと」に変わることは決してありませんでした。今、私には3人の子供がいますが、彼(女)らに何かを無理やりやらせるなどということは、想像にもできません。親として子供にできることは、子供が人生で成功できるような「道具」を身に着けさせること。もし、それがテニスであったなら、それはボーナスなのです。